大分県詩人連盟

〇受贈詩誌・詩集へのお礼26

台風一過。随分涼しくなりました。きょうはこれから墓の掃除と修理に行きます。
さて、今回も河野が読ませていただいた詩誌・詩集への拙い感想を書かせていただきます。
◆詩集「さんざめく種」佐川亜紀さん(土曜美術社出版販売)
『聖なる泥/聖なる火』については、誰かがこの時代に書き残さねばならなかった
言葉たちだと思いました。『春の唇』で描かれている韓国の馬山(マサン)は、
輸出加工区に指定されて発展した街です。「そこから世界の詩人に/詩の春風が贈られる」
の部分に見事に呼応しています。
◆詩集「渡邊坂」中井ひさ子さん(土曜美術社出版販売)
みずみずしい詩は若い人たちだけのものではない、という手本のような詩集でした。
一作一作は、時間をあちこち駆け回っているのに、不思議と作品は
読者に寄り添ってきます。『羊羹』『車中にて』など死後の世界までが、ご近所のように
さりげなく書かれているからでしょう。親しい過去の人が、こんな風に
時々私とすれ違ってくれればいいのに、と思わせる詩集です。
◆詩誌「銀曜日」47丸木由木子さん代表
メンバーの藤冨保男さんの意向を反映されているのでしょう、
表紙も、藤冨さん独特の絵文字を使った奥付も目次も、とてもお洒落です。
その藤冨さんの訃報が入ってきました。合掌。
『各人一言』で、宮島智子さんが犬と猫のことを書かれていました。
「人間と犬は最古からの友達で……猫はねずみとの関係で……」と。
つまらないことですが、ふと考えてしまいました。もし人間が、犬に
ネズミを捕ることを上手に教えていたら、ねこなどペットにはならず、
犬も早くから座敷犬が多かったのかな、などと。
◆詩誌「ピアニッシモ」15中島めい子さん編集
中島さんの『マド』は、なぜ「窓」でなくカタカナなのかと考えながら読みました。
「マド」からはきれいな景色が見えるだけではない、知らないことを
「即座に教えてくれ」る、というところで、そうかウインドウズかと、気づきました
その窓は「考えなくても 答えを出してくれる」もので、
「友だちでもないのに 友よ!と応えてくれる」ものです。
豊かな生活に、立ち止まって考えさせられる作品です。
「編集後記」にも、心を打たれることがあります。長谷川信子さんの文に
胸が熱くなってしまいました。
(河野俊一) 9.23

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〇秋の「高校文芸」コンクール

9月12日に、大分県高等学校文化連盟文芸専門部の
「高校文芸」コンクール選考会が行われ、上位受賞者の速報のみ入ってきました。
5部門(小説、詩、短歌、俳句、文芸部誌)の、それぞれ上位2作品の作者が
県代表として、12月に行われる九州大会(沖縄県那覇市)の出場権をもらえます。
本校は、3部門で3人が行けるようになりました。
ただ、大分県の場合、12月から多くの高校がスキー研修を兼ねた
修学旅行に出かけるのです。今年は2校の代表内定者が修学旅行と重なって、
九州大会に参加できないとのことです。残念。
部活動の主力も2年生、修学旅行も2年生なので、重なりやすいのです。
さて、私たちの学校は何とか九州大会には参加できるのですが、
選ばれた3人のうちの2人が、それこそ2年生で、
何と九州大会に出発する前日の夜に、修学旅行から帰ってきます。
当日の九州大会は那覇市での開催ですが、大分空港から沖縄への便がないため、
福岡空港からの飛行機に乗らざるを得ません。そのために
大分駅を6時40分に出る特急列車に乗ることになります。
修学旅行から夜帰ってきて、家族への報告もままならず疲れて眠って、
翌朝は早朝出発なのですからたいへん!しかも北海道のスキーから帰って、
翌日は沖縄!日本列島縦断と言えば聞こえはいいのですが、
寒かったり暑かったりで、体、大丈夫かなと心配です。
文芸部員よ、12月までには体を鍛えておいてください。
(河野俊一) 9.16 

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〇富士山の思い出(後編)

富士
岩場に座っていると、辺りは薄暗くなり始めた。慌てて、我に返り、テントを張る。
夕食の準備をするが、下痢がなかなか良く成らず、便所に通う。
夕食を済ますと、先程頂上小屋で買ったビールを呑む。呑むほどに酔いしれ、
テントから、顔出すと、空には星が唸っていた。数え切れないほどの星雲が萌えていた。
流星が西に東に飛んでいた。眠りたくない夜なので、しっかりと目を開けて、
星座と、地上の街のネオンを見とれていた。宇宙空間に居るようであった。
朝は、朝日とともに青い光が飛び込んできた。気持ちの良い朝である。
テントを慌てて畳むと、下山準備をする。下りは、早い。走って降りられる。
4合目まで、一気に下る。早朝のバスの時間を調べ、便所へ駆け込む。
松本駅に出て、すぐ穂高へ向かおうと思うのだが、この下痢が止まないと。
バスに乗り込む。松本で薬局へ行き、下痢止めと正露丸を買うが、まだ収まらなかった。
しかし九州から来たんだ。穂高縦走は諦めるわけにはいかなかった。
バスで上高地に入り、慣れた登山道を歩き、徳沢に着いた。
井上靖の『氷壁』の舞台となった「氷壁の宿」のある処だ。ここに診療所があった。
診療所のテントに近づくと、ハンモックでくつろいでいるドクターらしき人が居た。
ここで便所手洗い場の水を飲んでしまった事を告げると、横になるように言われ、
電解質の点滴を打たれた。約2時間点滴を打つと、気分が良くなった。
治療代をと尋ねると「いいですよ」と言う。「そういうわけにはいかない」と返したら、
「それなら、材料費を貰います」と言った。千円程支払い頭を下げて診療所を後にした。
こうして、元気を取り戻して、予定通り穂高を縦走すると、再び徳沢に戻り、
山小屋へビールを買いに行く。小屋はシックな感じの古い宿で、『氷壁の宿』
という看板が掛かっていた。缶ビールを二本買って芝生に寝っ転がれば、
酔いが回っていい気分になった。此処はテント場で最高だ。そういえば、穂高の帰りに
この徳沢で打ち上げをするパーティが多い。夜になると、各大学の山岳部が
「今から『穂高よさらば』を歌います」などと言っては合唱していた。
途中花火が上がり、場を盛り立てた。こうして『氷壁の宿』徳沢でトレーニングを終え、
コンデションを整え、予定通りヨーロッパアルプス遠征へと飛び立つことが出来た。
富士山は訓練で行った山であるが、その美しさは、さすがに絶景。信仰の山として
拝まれるだけの名峰であった。また歳を取ったら、行きたい山のひとつである。
(和田みつる) 9.9

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〇富士山の思い出(前編)

富士
富士には月見草が良く似合う、と太宰治は言った。確かに富士には月見草が似合う。
永年の登山生活の中で、富士には登って無い。静岡まで行く時間と金があれば、
信州、富山の北アルプスと呼ばれる、切り立った山々の方に魅了される。
富士には、いつでも登れる、と観光地化した富士には魅力がなかった。
富士は眺める山で、登る山ではない、と決め付けていた。
富士山に登ろうと思ったのは、マッターホルンの、高度順応の訓練のためである。
先輩が、山自体は簡単であるが、高度順応が課題だから
行く前に富士山の頂上で一泊したらいい、と言ったからだ。7月の初めに梅雨が明けた。
さぁ、トレーニング登山の開始である。静岡駅近くのバス停の便所手洗い場で、
水道水を飲料水と炊事用に四リットルほど汲むと、バスに乗り込み、富士を目指す。
バスを降りると、梅雨の上がった大空は真っ青に透き通る。空気が美味しい。
再来週、訪れるであろうマッターホルンの町ツェルマットが、浮かんで来る。
トレーニングと思い、30kg程の荷をザックに詰め、ステックを持って登る。
季節の一番いい頃なので、登山者の多いこと。外国人も多い。
5合目で、早くもダウンしている人がいた。6合目はトレーニングなので、
通り過ぎる。7合目まで来ると、小屋で売っている携帯用の酸素を吸っている人もいる。
8合目、9合目まで来ると、荷が重く感じて水を呑む。
頂上が近くなると、傾斜もキツくなり、道にはフィクスロープが張られていた。
空が青い。コバルトブルーだ。高度のせいであろう。星が昼間でも
見えるような気がした。太陽もギンギンに輝いている。午後3時を回っていた。
頂上である。頂上を回っていると、おなかがグルグルと鳴ってきた。
慌てて、頂上の便所に駆け込むと、酷い下痢だった。手洗い場の水が悪かったのだ。
持ってきた薬を呑んだ。水は沸騰させると良かろうと、バーナーでお湯を沸かして
コーヒーを呑む。そして、眼下を見ると、雲海で覆われていた。
独立峰なので、夕方から雲に覆われる。白とグレーの混ざりあった雲海は、
それは壮絶なものであった。これに日が沈みかけ、オレンジ色から、茜色、紫へと
雲海は萌え上がって来る。この絶景を、人のいない頂上の岩場から、眺め、
何ともいえない幸福な気持ちになった。地球は美しい。
(和田みつる) 9.2

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〇受贈詩誌・詩集へのお礼25

今日も出勤で、さっき帰ってきました。さて、今回も
河野が読ませていただいた詩誌・詩集への拙い感想を書かせていただきます。
◆アンソロジー「福岡県詩集2016年度版」福岡県詩集編集委員会(書肆侃々房)
10年に1度の発行ということもあって、読み応えのある作品が並んでいます。
また、個人的にもお世話になった麻生久さん、岡たすくさん、黒田達也さん、
高松文樹さん、鍋島幹夫さん、野田寿子さんなどの方々が、
この10年の間に鬼籍に入られたとのことに改めて合掌したいと思います。
10年毎の発行ということで、すでに詩誌や詩集に発表した作品も多いのでしょうが、
三重野睦美さんの『つきとがいとう』は、初めて読ませていただきました。
人生には思いがけず、悲しさとこっけいさが同居している場合があります。
作者は悲しくて、月の隠れた夜道で泣こうと意を決するのですが、
いざ泣こうとする時に限って明るい街灯が近づくし、
そんなことを繰り返すうちに月もまた出そうになる、という
おかしくも切なくなる作品です。何とかしてあげたいと思ってしまいます。
◆俳句とエッセー「山ガール」山本純子さん(創風社出版)
驚きました。冒頭から「奥の細道」をみごとな寅さんの口調で語っています。
マドンナが、いつの間にか性別さえも乗り越えて寅さんになってしまった、
という感じです。参りました。
詩も『夜中に』など、やはり山本さんの作品です。
こちらからあちらへの視点と、あちらからこちらへの視点。
相手だったら、といつも考えるところから詩が立ち上がってきます。
◆詩誌「ココア共和国」vol.21秋亜綺羅さん編集(株式会社あきは書館)
秋さんの鋭いエッセイが、絶好調のうちに最終回を迎えてしまいました。
今回も、シビアで厳しく、爽快です。
いつのまにか個人情報を大切にするようになった国で、その情報を
ひとり握っているのが「国」なのですが、秋さん、2千億円かけて失敗した
住基ネットを引き合いに出して、最後のまとめが痛烈。
「今度こそ失敗してほしくないような……。またまた失敗してほしいような……。」
詩では佐々木貴子さんの小特集が圧巻。『飼育』『影』の気持ちが悪いストーリー性。
◆詩集「花もやい」岡田哲也さん(土曜美術社出版販売)
糸瓜の重量は(ご自分のように)重さでなく軽さなのだ、
などという感覚(『糸瓜の軽さ』)や、穏やかな言葉の中に、
人と人との間に生まれる痛みを感じさせる作品(『雨糸』)が心に残りました。
『浜昼顔』には、こんな2行もあります。
「昼顔の 夜の顔をしらない しあわせ/凪ぎの日の 嵐をしらない わかさ」
(河野俊一) 8.26 

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